舞台鑑賞記事を書き続けている名古屋の中村です。
今回は、以前から観続けてきた『彩の国シェイクスピアシリーズ』の本当のファイナル作品、小栗旬さん主演の『ジョン王』です。
元々この作品は2020年6月に第36弾として上演されているはずだったのですが、コロナ禍で全公演中止。そのまま主演の小栗さんが大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』の撮影となってしまわれたので、実に2年半越しの再演で、この作品が本当のシリーズ最終作となりました。
しかも主演の小栗旬さんはその大河ドラマ明けすぐの舞台、また現実世界ではロシアによるウクライナへの軍事侵攻が勃発と、このタイミングで戦争を扱ったこの『ジョン王』の再演は、作品そのものを非常に興味深いものにしましたし、実際に演出の吉田鋼太郎さんは2020年の演出予定だったものから、大幅に演出内容を変更したそうです。
本当に、舞台は「生もの」ですよね。その時代時代で作品の捉え方や演出方法が変わるから「古典」でも面白くなる。
『彩の国』シリーズ恒例の「オール・メール」(女性の役も男性が演じる)だったり、現代と物語の時代を小栗さんが流行りの「タイムリープ」する演出だったり、時々天井から人形が降ってきたり(意味不明!どうやら蜷川さんの過去の演出へのオマージュらしい笑)、小栗さんや鋼太郎さんがミュージカルの様に歌ったり、60〜70年代の反戦フォークソングが流れたり、ラストは機関銃を構えた小栗さんで幕になったりと、今までのシリーズ作品とはガラッと演出を変え、「シェイクスピア作品の中で最も駄作」と言われている作品を、すごく「反戦」色の濃い、「アングラ」っぽい面白い作品として作り上げたあたりは吉田鋼太郎さんの演出力によるもので、上演回数が極めて少ない問題作をわかりやすく楽しんで観られたことは本当にラッキーだったと思います。しかも大河ドラマ明けすぐの「リアル」北条義時・小栗旬さんには「本物が居るよ」と大感激でした笑。
これでしばらくは「蜷川シェイクスピア」は見納め。次なる「吉田鋼太郎シェイクスピア」を心待ちにしている今日この頃です。
(▼写真は会場の御園座です。初体験でした。床のフカフカ絨毯が印象的でした笑)